競合分析の成果物はたいてい比較表です。相手の価格、評価、レビュー数、販売数の推定を自社と並べたもの。
この表からはほとんど行動が出ません。 答えているのは「相手はどうか」であり、必要な問いは「自分は何をすべきか」だからです。価格が 3 ドル低い —— それで?値下げしますか。
役に立つ競合分析が探すのは比較ではなく差分です。相手にあって自分に無いもの。差分は行動に直結します。
行動につながる四つの差分
| 角度 | 何を探すか | 対応する行動 |
|---|---|---|
| 語の差分 | 相手が露出していて自分がしていない語 | 語を補うか広告を出す |
| 二重掲載の無駄 | 相手が自然枠と広告枠を同時に取っている語 | 相手の出稿方針を読む |
| 低評価の未充足需要 | 相手が繰り返し言われ、まだ直していない点 | 商品での差別化 |
| バリエーション構成 | 相手にあって自分に無い展開 | 規格を補う |
最初の二つは流入データ、三つ目はレビュー、四つ目は商品詳細から得ます。
一、語の差分
定義を固定した三手順です。
- 同種の競合 3〜5 件の流入キーワードを取る(同じサイト、同じ月)
- 自社 ASIN の流入キーワードを、同じ条件で取る
- 差分を取る。競合のうち少なくとも 2 件にあって自分に無い語
手順 2 の「同じ条件で」が要です。 競合だけ調べれば「競合は強い」という表が出来上がるだけですし、両側を違う月や違うサイトで取れば差分はノイズになります。
差分は候補リストであってやることリストではありません。相手には自社に無いバリエーション、サイズ、認証があるかもしれず、相手に関連する語が自社には関連しないこともあります。
逆引きのフィールドの読み方とページングの上限はASIN のキーワード逆引きにあります。
二、直接計算できる数字
流入キーワード統計 API は ASIN ごとに三つの計数を返します。keywords(全流入語)、ranks(自然)、ads(広告)。
ドキュメントの例値は 2685、1848、1414。1848 + 1414 = 3262 で、総数より 577 多いことに注目してください。
この超過分は誤りではなく、自然枠と広告枠を同時に取っている語です。
二重掲載の語数 ≈ ranks + ads − keywordsこれを競合に当てると、相手の出稿の型が読めます。二重掲載の比率が高ければ、すでに自然順位を持つ語にも広告を出し続けている(守り)。低ければ、広告は主に新しい語を開拓するために使っている(攻め)。
「相手は広告にたくさん使っているか」よりはるかに具体的で、しかも三つの数字で済みます。自社への当て方はキーワード順位の監視にあります。
三、低評価に埋もれた未充足の需要
競合の低評価は自社の低評価より価値があります。 買い手がすでに言葉にしていて、相手がまだ満たしていない需要だからです。
進め方は、相手の 1〜2 星を取り、再現率で並べ、繰り返し出てくるものを探すこと。自社の商品にたまたまその問題が無ければ、それはそのまま箇条書きに書ける差別化点になります。
外せない境界が二つ。
まずレビューの出どころを分ける。 レビューは verified、vine、free、experience を持ち、無償で受け取った人には「価格に見合うか」の判断が欠けています。基準には実購入のものだけを使ってください(レビューの四つの出どころ)。
「商品を直す」と「説明を直す」を分ける。 「写真と違う」というレビューは写真の問題であって商品の問題ではありません。後者を前者として扱うことが、競合分析で最も高くつく誤読です(レビュー分析の進め方)。
四、バリエーション構成
商品詳細 API は parent と variationList / variations を返します。競合が 8 色で自社が 3 色なら、それは具体的で実行可能な差です。
ここにも罠があります。親と子のデータは別物です。 親のレビューは全バリエーションの合算で、販売数の推定は一族の合計です。相手の親の数値と自社の子の数値を比べると数倍ずれることがあり、しかもエラーにはなりません(ASIN とは)。
表に落とす
四つの角度から出たものは分けて記録してください。何を観察したか、それが何を意味しうるか、自分は何をするか —— 三列に分ける。溶接してしまうことが、推測を発見として世に出す定番の経路です。
表の構成とフィールド対応はAmazon 競合分析表テンプレートに、この流れ全体をモデルに任せる方法は競合分析を AI エージェントに任せるにあります。
競合分析にできない三つ
相手のバックエンド検索語レポートは取得できません。 それはセラーアカウントの認可データです。逆引きが返すのは公開検索結果に実際に現れた語で、出どころが異なり対応もしません。
相手の実売と広告費も取得できません。 販売数は BSR からの推算で、広告費は完全に見えません。正確な値を出せると謳うものは中身が推算です。
なぜそうしたかは分かりません。 ある語に出稿を増やしたことはデータから見えますが、それが戦略の転換なのか在庫処分なのかは見えません。
よくある質問
競合は何件選ぶべきですか。 同種を 3〜5 件。3 件未満だと差分が個別事例だらけになり、5 件を超えると「カテゴリ全体の語」に薄まって狙いが失われます。
本当の競合はどう見分けますか。 売れている相手ではなく、同じ検索語を奪い合っている相手です。印象より逆引きの語の重複度で決めるほうが正確です。
頻度はどれくらいですか。 月次です。相手の語もレビューもゆっくりしか変わらず、週次ではノイズばかり見えますし、自分の変更も効果が出るまで時間がかかります。
競合の低評価をそのまま要件定義にできますか。 そのままは使えません。需要の手がかりであって、自社の費用と供給体制の判断を通す必要があります。相手が解決していないのは、解決に値しないからということもあります。