多くの「Amazon データ分析レポート」は同じ末路をたどります。作り、配り、反応がなく、翌月また作る。
原因はたいてい詳しさの不足ではありません。むしろ逆で、詳しいほど前回と並べられなくなります。 そして比較こそがレポートの価値のすべてです。今週は先週とどう違うのか、今月の変化は傾向なのか揺らぎなのか。
数字は立派でも定義が毎回変わるレポートは、毎回ゼロから始めているのと同じです。
固定しなければならない三つ
| 固定するもの | 動かすとどうなるか |
|---|---|
| 定義 | 今回は大カテゴリ順位、次回は小カテゴリ順位では二期が比較できない |
| 取得時刻 | 月曜の数字か金曜の数字か分からなければ、変動を説明できない |
| 項目の出どころ分類 | 事実と推算が混ざると、読む側はどこまで信じてよいか判断できない |
三つ目が最も飛ばされます。販売数は BSR からの推算、価格はページ上の事実、「このカテゴリには機会がある」はあなたの判断です。区別せず同じ表に並べれば、読む側は全部信じるか全部疑うかしかできません。 三種類の分け方はAmazon のデータ分析にあります。
最小構成に何を入れるか
指標ではなく問いで構成してください。指標のダッシュボードは最も動いた数字に紙幅を与えますが、最も動いたものはたいていノイズです。
| その節が答えること | 何を置くか | 出どころ |
|---|---|---|
| 自分の位置は動いたか | 流入語の総数、自然語数、広告語数 | 流入キーワード統計(keywords / ranks / ads) |
| その変化は自分か市場か | 主要語の前期比と前年同期比 | キーワードトレンド(chainGrowth / yearlyGrowth) |
| 費用は効いているか | 露出だけで転換しない語の増減 | 販売キーワード逆引き(conversionType が I) |
| 買い手は何を言っているか | 今期の新規低評価の問題分類 | レビュー取得(date で今期を抽出) |
| 何を変えるか | 三〜五件の行動、各々に担当者 | あなたの判断 |
最後の行がレポートの存在理由です。 行動の無いレポートは保管記録です。
レポートを無効にする三つの習慣
ツールを乗り換える。 販売数の換算モデルは提供元ごとに違い、同じ ASIN で二倍ずれることは珍しくありません。途中で乗り換えれば前後が比較できなくなります。乗り換えるなら基準を作り直し、断点をレポートに明記してください。
カテゴリ階層を変える。 大カテゴリ順位と小カテゴリ順位は大きく違うのに、画面には「順位」としか書かれていないことが多い。カテゴリ名ではなくノードのパスをレポートに書いてください。
判断をデータに混ぜる。 「競合が出稿を増やした」は判断、「競合の広告語数が 1,414 から 1,600 になった」はデータです。前者は正しいかもしれませんが、データの列に置くべきではありません。
頻度はカレンダーではなくデータの速さに合わせる
データの動きより速く見れば、見えるのはノイズだけです。
| 内容 | 推奨頻度 |
|---|---|
| 価格、クーポン | 日次。ただし異常のみレポートに載せる |
| キーワード順位、流入語の集計 | 週次または月次 |
| レビューと問題分類 | 月次 |
| カテゴリ構造、出品者構成 | 四半期 |
順位を日次で見張る意味はほとんどありません。 その解像度ではノイズが信号を大きく上回るからです(キーワード順位の監視)。
定時ジョブにする頃合い
手作業のレポートが高くつくのは繰り返しになってからです。合図は明確で、毎期同じ作業になったら —— 同じ条件で絞り、同じ項目を書き出し、同じ式を当てる —— 手作業を続けることは繰り返しに金を払うことです。
レスポンスにはそのまま使えるタイムスタンプがあります。流入キーワード統計の calcTime、逆引きの各語の updatedTime。レポートに載せれば、読む側はその期のデータの鮮度が分かります。
呼び出し量の見積もりと保存すべき項目は導入前に決めておく五つのことにあります。
レポートが約束してはいけない三つ
正確な販売数。 プラットフォームは販売数を公開しないため、載る数字はすべて推算です。「2,000〜3,000 の範囲」は誠実で、「月間 2,647 個」は偽の精度です。
因果。 「順位が 12 位下落し、同期にその語の検索量は前期比 −18%」は書けます。「市場が落ちたので順位が下がった」は書けません。相関は因果ではなく、同じ期にリスティングも変更していればなおさらです。
競合の内部数値。 相手の実注文数、広告費、バックエンド検索語は取得できません。レポートにそれらが載っているなら、推算か創作です。
よくある質問
どれくらいの長さにすべきですか。 読み切ってもらえる長さです。行動三〜五件と裏付けデータで、たいてい 1 ページに収まります。詳細が要る人は元の表を見ます。
図は入れるべきですか。 推移のグラフは価値があります。単一期の円グラフはたいてい無価値です。前期と比較できず、比較こそが目的だからです。
複数サイトはどう書きますか。 分けて書きます。検索量、競争の強さ、出品者構成はサイトごとに独立しており、まとめると別々の市場を平均してしまいます。
前期の結論が間違っていたら。 今期に明記して訂正します。レポートの信頼性は間違えないことではなく、自ら訂正することから来ます。