商品リサーチはたいてい同じ始まり方をします。有望そうな商品を見つけ、それから成立する理由を探す。
この順序は体系的に判断を歪めます。いったんある商品に決めてしまうと、以降のすべての工程が無意識にその商品の擁護材料を集め始めます。 競争が激しいのは「需要がある証拠」になり、利益が薄いのは「数で回す」になり、評価が低いのは「改善の余地」になる。
順序を逆にしてください。商品リサーチは消す作業です。正しい商品を探すのではなく、成立しない選択肢の圧倒的多数を、できるだけ安く外していく作業です。
四つの段階、どれも「消す」
| 段階 | 問い | 何を消すか | 費用 |
|---|---|---|---|
| 1. カテゴリ | 新規に余地が残っているか | カテゴリまるごと | 最小 |
| 2. 価格帯 | 需要が満たされていない帯はどこか | カテゴリの大半 | 小 |
| 3. 商品 | 具体的にどれが攻められるか | 商品のほぼ全部 | 中 |
| 4. 自分 | そもそも自分にできるか | 残りの大半 | 最大 |
順序はそのまま費用の順序です。 段階 1 でカテゴリを一つ外すのは照会一回、段階 4 で候補を一つ外すときには既にサンプルと見積もりに二週間かけているかもしれません。逆から進むのは、最も安く済むはずの判断を最も高い方法で行うことです。
段階 1:商品を探す前にカテゴリを外す
最も飛ばされやすく、そして最も効率よく消せる段階です。
判断基準は「このカテゴリが大きいか」ではなく、新しい Listing に場所が残っているかです。出品期間分布 API は Listing の年数でグループ化して販売数の占有率を返し、ドキュメントの「3年以上」の帯の unitsRatio の例値は 0.834 です。つまりそのカテゴリの販売数の 83.4% が三年以上前からある Listing に渡っています。
総量が大きいことと、自分が取れることは別の話です。 月に百万個動いていても既存勢が総取りしているカテゴリは、月十万個で構造が緩いカテゴリより難しい。
見るべき分布は四つ。出品期間、出品者タイプ、価格、そしてカテゴリ自体のブランドと出品者の集中度。詳細はAmazon カテゴリ分析:四つの分布が「まだ入れるか」を決めるにあります。 集中度そのものの読み方と、販売数シェアと売上シェアが食い違う理由はAmazon 市場分析にあります。
段階 2:カテゴリ内で価格の空きを探す
価格分布 API は価格帯ごとに商品数と販売数の占有率を返します。探すのは最高帯でも最安帯でもなく、その二つが食い違っている場所です。
- 商品数は多いのに販売占有率が低い → 売れないもので埋まっている帯
- 商品数は少ないのに販売占有率が高い → 需要がそこにあり、供給が追いついていない
後者が空きです。たいていは中ほどの目立たない帯にあります。両端は何度も試されているからです。
段階 3:ここで初めて個別商品
ここまで来れば範囲は十分狭く、絞り込み条件を当てられます。選品 API には min / max の条件が 20 組近くあります。需要の下限、競合の上限、利益の帯、複雑さ、大手ブランドの除外。
この段階で重要なのは精密に絞ることではなく、基準を書き残すことです。 三か月後に何を基準にしていたか説明でき、引き継いだ人が条件をそのまま再利用できること。
- 三つの API を定時ジョブにつなぐ:一括選品
- 候補を二人で突き合わせられる表に落とす:商品リサーチ表
- 拡張機能か SaaS か API か:リサーチツールの選び方
- 日本やヨーロッパに切り替えるときにやり直すもの:マーケットプレイス別のリサーチ
段階 4:データが答えない部分
最初の三段階はデータで答えられます。ここは答えられません。
- 仕入れられるか、いくらで仕入れられるか
- 特許や認証のリスクがあるか
- 自社のブランド、倉庫、資金繰りに合うか
最後に置くのは最も高くつくからで、最も高くつくからこそ、前の三段階の存在意義はここに到達する候補をできるだけ減らすことにあります。 よくある無駄は、候補 30 件を持って仕入先に相談し、そのうち 25 件は段階 1 で外れているべきだったという事態です。
順序が逆になる典型的な三つ
「自分が売りたいもの」から始める。 それはリサーチではなく正当化です。好みがあってよいのですが、それは段階 4 に出てくるものであって段階 1 ではありません。
売れ筋ランキングから始める。 そこに並んでいるものはすでに勝っており、示しているのは過去の結果であって今の空きではありません。競合は段階 3 で較正に使うもので、段階 1 の出発点ではありません。
「月間販売数が多い」から始める。 販売数は推算値です。プラットフォームは販売数を公開しておらず、月間の数字はすべて BSR からの推算です。桁を並べるのに使うのは構いませんが、唯一の基準にすると混雑した側へまっすぐ歩いていきます。どれが事実でどれが推算かはAmazon の販売数データで分かること・分からないことにあります。
いつ止めるか
データの役割は数千の可能性を数十に絞ることであって、最後の判断を下すことではありません。
残った候補の違いがもうデータの中に無くなったら、照会をやめてください。 それ以上調べても確信は増えず、着手が遅れるだけです。その時点で不確実性を減らすのはサンプル、小ロットの試し、仕入先との会話であって、同じ問いをもう一つのツールに通すことではありません。
よくある質問
初めての人はどの段階から始めるべきですか。 やはり段階 1 です。初心者が最も犯しやすい誤りは、段階 3 や 4 から始めること —— 先に商品の案を持ち、後からそれを支持するデータを探しに戻ることです。
この手順にどれくらいかかりますか。 最初の二段階はカテゴリあたり 15 分程度です。どちらも集計データだからです。段階 3 は候補数次第。実際に時間を食うのは段階 4 で、前の段階が存在する理由もそこにあります。
カテゴリごと外すのは乱暴ではないですか。 見落としは出ますが、費用が非対称です。できたはずのカテゴリを逃す費用は機会費用で、位置が固まったカテゴリに入る費用は実際の在庫と広告費です。
サイトをまたいで結論を流用できますか。
そのままは使えません。価格帯、競争の強さ、出品者構成はサイトごとに独立しており、すべての API に marketplace があります。同じカテゴリが二つのサイトで逆の結論になることもあります。